スマホを見ていると、流れてきます。「AIで、仕事が劇的に変わった」。そう語る動画。効率が跳ね上がった、人生が変わった、と。
確かに、劇的に変わる人は、います。でも、それは、誰の話でしょうか。
AIに任せられることは、本物の便利です
まず、はっきりさせておきます。AIに任せられることは、本物の便利です。
毎日の同じ作業。決まった時間の、決まった処理。単純な繰り返し。こういうものを、肩代わりさせる。タイマーをセットするように、任せておけば、やってくれる。否定するところは、ありません。実際に、楽になります。
そして、こうした作業が仕事の大半を占めている人なら、効率は跳ね上がる。「劇的に変わった」は、その人にとっては、本当のことです。
ただ、それは、一部の人の話です。多くの人の仕事は、そういう単純な繰り返しだけでできているわけではない。だから、同じ道具を使っても、「劇的に」とまではならない。動画の中の人と自分とでは、置かれている場所が、違うんです。
教わるのは、賢いことです
誤解されたくないので、書いておきます。
忙しくて、自分で調べる時間が取れないなら、誰かにさっと教えてもらうのは、むしろ賢い選択です。一から手探りするより、要点を教わって、すぐ使えるようにする。時間を買う、ということ。そこに、引け目はいりません。
ここで言いたいのは、「教わるな」ではないんです。
でも、そこには天井があります
教わって、できるようになること。それは、たいてい、公式のソースに載っていることです。調べれば、誰でも届く範囲。
便利です。でも、そこには、天井があります。教わって届く先は、その機能が用意している範囲まで。それ以上には、伸びていきません。機能は、機能の分だけ。
だから、その技術を学んでも、「AIはすごい」「教えてくれた人はすごい」とまでは、ならないんです。便利を手に入れただけ。すごいのは、機能であって、自分ではない。
「劇的に変わった」という売り文句は、この天井のある便利さを、まるで天井がないかのように見せています。一部の人にしか起きない変化を、誰にでも起きるかのように。これは、名前を変えながら、ずっと繰り返されてきた売り方です。道具がITと呼ばれた頃も、DXと呼ばれた頃も、同じでした。
天井のない場所
では、天井のない場所は、どこでしょうか。
機能の使い方では、ありません。問いかけ方でも、ありません。それらは、便利だけれど、天井がある。
天井がないのは、その下です。自分は、何を知りたいのか。なぜ、それを知りたいのか。この問いには、公式のソースがありません。教科書にも、載っていない。だから、天井も、ありません。考えれば考えるほど、深くなる。道具が次に何に変わっても、ここは古びない。
機能は、誰かに教われば、すぐ天井に届きます。でも、「何を知りたいのか」は、教わって終わりには、なりません。一生、伸ばせる。
任せて、空けた時間で
だから、こう考えてみてください。
任せられることは、任せていい。タイマーのように、単純な作業は、道具に渡す。教わったほうが速いなら、教わればいい。そこは、効率の話です。天井まで、さっと行けばいい。
問題は、その先です。任せて、空いた時間を、どこに使うか。
天井のある便利さを、次々と追いかけるのか。それとも、その時間を、天井のない側――自分は何を知りたいのか――に、使うのか。
「劇的に変わった」と言う人を、うらやむ必要はありません。あの変化は、一部の人の、天井のある話です。あなたが本当に変わるとしたら、それは、便利の上ではなく、たぶん、その下の場所でです。