文章を書いていると、つい、むずかしい言葉を選びたくなります。そのほうが、賢そうに見えるからです。でも、読み手にとっては、逆なんです。むずかしい言葉が増えるほど、読むのはしんどくなります。
言葉は、むずかしいほうではなく、分かるほうを選ぶ。漢語をやわらかくする、専門用語に説明を足す、聞き慣れないカタカナを避ける。そして、ここぞというときは、オノマトペで情景を見せる。この四つを、見ていきます。
むずかしい漢語を、やわらかくする
漢語というのは、漢字が連なった、かたい言葉です。「購入する」「記入する」のように、音読みの熟語が多いものです。間違いではありません。でも、漢字が続くと、ぱっと見が黒くなり、かたく見えます。同じ意味なら、やわらかい和語に変えます。
| 漢語(かたい) | 和語(やわらかい) |
|---|---|
| 購入する | 買う |
| 記入する | 書く |
| 実施する | 行う |
| 開始する | 始める |
| 変更する | 変える |
| 増加する | 増える |
| 確認する | 確かめる |
| 提出する | 出す |
漢字でなくても、ひらがなに開くだけで、やわらぐ言葉もあります。
| 漢字 | ひらがな |
|---|---|
| 〜する事 | 〜すること |
| 出来る | できる |
| 沢山 | たくさん |
| 是非 | ぜひ |
| 様々な | さまざまな |
| 頂く | いただく |
たとえば、こう書くより、
この方法を使用すれば、作業時間を短縮することが可能です。
こう書いたほうが、すっと読めます。
この方法を使えば、作業の時間を短くできます。
見つけ方:声に出して読んで、固いなと感じた言葉を探します。漢字が三つ、四つと続いているところも、目印です。
専門用語には、ひとこと添える
専門用語というのは、その分野の人にしか通じない言葉です。書き手には当たり前でも、知らない人は、そこで読むのをやめてしまいます。
たとえば、料理の記事で、こう書いたとします。
仕上げに、香味野菜を加えます。
料理をする人なら、分かります。でも、しない人は「香味野菜って何?」で止まってしまいます。ひとこと、添えるだけで、いいんです。
仕上げに、香味野菜——ねぎや生姜、にんにくを加えます。
二つ以上の専門用語が並ぶときも、同じです。
確定申告では、青色申告にすると、控除が受けられます。
知らない人には、三つとも壁になります。横に、短い説明を入れます。
確定申告(一年の収入と税金を国に申告する手続き)では、青色申告にすると、控除——税金が差し引かれる仕組み——が受けられます。
全部の言葉を説明する必要は、ありません。読み手が知らなそうな言葉にだけ、カッコかダッシュで、短く添えます。それだけで、置いていかれる人が、いなくなります。
見つけ方:書いたあと、その分野の外の人が読んだら、と想像します。引っかかりそうな言葉に、説明をそえます。
聞き慣れないカタカナを、避ける
横文字は、書くと、なんとなくこなれて見えます。でも、読み手が知らなければ、そこでつまずきます。日本語で言えるものは、日本語にします。
| カタカナ | 日本語 |
|---|---|
| エビデンス | 根拠 |
| アサインする | 任せる |
| コンセンサス | 合意 |
| リスケ | 予定の組み直し |
| ペンディング | 保留 |
| スキーム | 枠組み |
| メソッド | 方法 |
たとえば、こう書くより、
今回の件は、いったんペンディングで、来週リスケしましょう。
こう書いたほうが、誰にでも通じます。
今回の件は、いったん保留にして、来週、日を組み直しましょう。
もちろん、日本語にしにくい言葉も、あります。そういうときは、無理に訳さなくてかまいません。でも、日本語で言えるのに横文字にしているなら、戻します。それだけで、伝わる相手が増えます。
見つけ方:横文字を見つけたら、日本語で言えないか、一度試します。言えるなら、そちらにします。
オノマトペで、情景を見せる
ここまでは、引き算の話でした。最後は、足し算です。
オノマトペというのは、音や様子、気持ちを表した言葉です。たった数文字で、情景を見せてくれます。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 雨・水の音 | しとしと、ざあざあ、ぽつぽつ |
| 動きの様子 | ぐったり、てきぱき、のろのろ |
| 気持ち | そわそわ、うきうき、もやもや |
たとえば、こう書くより、
仕事から帰って、疲れて、ソファに座りました。
こう書いたほうが、伝わります。
仕事から帰って、ぐったりして、ソファに沈み込みました。
長い説明を、一語に縮めることもできます。「細い針で何度も刺されるような痛み」と書くかわりに、「ずきずき」と書けば、ひと言で伝わります。
ただし、使いすぎると、子どもっぽくなります。ここぞ、という場面に、一つだけ。それくらいが、ちょうどいいんです。
言葉えらびは、むずかしいことではありません。むずかしい言葉に気づいたら、やさしい言葉に置きかえます。やることは、それだけです。賢く見せるためではなく、「伝えるために書く」。そう決めれば、選ぶ言葉は、自然と変わります。