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なぜ、私たちは「人」にまでPDCAを当ててしまうのか

2026 6/03
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人間を壊す信頼と実績のフレームワーク群
2026年6月3日
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部下に、目標を立てさせる。 週に一度、進み具合を確認する。 できていないところを見つけて、指摘する。 次は、こうしよう、と改善案を出させる。

よくある光景です。 そして、これは、PDCAです。計画し、実行し、評価し、改善する。仕事の改善に使う、あの四段階を、私たちは、部下の育成にも、当てはめています。

ここで、こう思う方が、多いはずです。

それの、何が悪いのか、と。 むしろ、きちんと面倒を見ている。放任しているわけではない。目標も立てさせず、確認もしない上司のほうが、よほど問題だ。PDCAは、ビジネスの基本だ。できる人ほど、部下にも、しっかり回させる──。

その通りです。 ここで反論するつもりは、ありません。

PDCAは、優れた仕組みです。仕事や工程を、よりよくしていくには、これ以上ない型のひとつでしょう。だから、人にも使えるはずだ、と考えるのは、まっとうな発想です。

ただ、ひとつだけ、立ち止まってみたいのです。 PDCAそのものが悪いのではなく、それを「人に向けたとき」に、何が起きているのか。 そして、そもそも、なぜ私たちは、仕事のための型を、人にまで当てたくなるのか。

その「なぜ」から、見ていきます。

目次

人の心は、見えない

部下が、今、何を考えているか。 やる気があるのか、ないのか。伸びているのか、止まっているのか。 本当のところは、見えません。

見えないものは、不安です。 これは、上司として、ごく自然な感情です。責任を負っているほど、相手が見えないことは、こわい。

だから、私たちは、見えるようにしようとします。 目標を、数字で立てさせる。進捗を、定期的に確認する。できた・できないを、評価する。 こうすれば、見えなかった部下の状態が、見えるようになる気がします。手の中に、収まる気がします。

PDCAは、そのための、よくできた道具です。 計画という形で、相手の向かう先を、定められる。評価という形で、相手の現在地を、測れる。見えない人を、見えるものに、変えてくれる。

つまり、私たちがPDCAを人に当てたくなるのは、相手を支配したいからでは、ありません。 見えないものが、不安だから。その不安を、なんとかしたいからです。

これは、責められるような動機では、ありません。 ただ、この自然な不安が、次の一手を、誤らせます。

真面目な人ほど、型を手放せない

もうひとつ、別の心の動きがあります。

真面目な人ほど、しっかり準備します。学んだことを、きちんと使おうとします。 PDCAを学べば、PDCAで、ちゃんとやろうとする。それは、誠実さです。

ただ、その誠実さが、人に向くと、少し、硬くなります。

きちんと計画を立てさせたぶん、計画から外れることが、許せなくなる。 きちんと評価するぶん、評価の枠に収まらないものが、見えなくなる。 型を、丁寧に使おうとするほど、型の外で起きていることに、気づけなくなる。

準備の丁寧さ。型への忠実さ。 それ自体は、美点です。けれど、相手が「人」のときには、その丁寧さが、相手を型に押し込む力に変わってしまう。

真面目さは、悪いことでは、ありません。 ただ、真面目さは、型を、手放しにくくさせます。

人は、モノではない

ここまでは、私たちの側の、心の話でした。 では、PDCAを当てられた「人」の側は、どうでしょうか。

計画通りに動くことを、求められる。 計画になかったことをすると、ずれ、として扱われる。 評価のたびに、できた・できないを、判定される。

モノなら、これでいい。工程は、計画通りに動くことが、正しい。計画とのずれは、直すべき不良です。

でも、人は、モノでは、ありません。

予想していなかった方向に、伸びることがある。 計画になかったことに、興味を持つことがある。 数字にならないところで、育っていることがある。

それらは、ずれではありません。人が、生きて、動いている証です。 けれど、PDCAという型は、それを、ずれとして扱います。計画にないものは、評価できないからです。

計画通りかを確認され、ずれを指摘され続けると、人は、どうなるか。 だんだん、計画にないことを、しなくなります。 評価されないことを、話さなくなります。 そして、少しずつ、口を閉じていきます。

見えない不安を消すために、PDCAを当てた。 けれど、当てられた相手は、見せることを、やめていく。 不安を消そうとした行為が、かえって、相手を、見えなくしていく。

ここに、ねじれがあります。 管理しようとするほど、いちばん知りたかった相手の心が、遠ざかっていくのです。

向きを、変える

私は、内にあるものを、外に出す。その仕事を、しています。 言葉にならないものと、出会う。まだ形になっていない、その人の内側の声を、見える形にする。内から外へ、向きを変えることに、価値があると、考えてきました。

この本も、同じでした。

PDCAは、もともと、モノに向かう型です。それを、人に向けた。 向きが、ずれたのです。モノを測るための矢印を、人に突きつけてしまった。

だったら、その向きを、修正すればいい。

一方的に相手を測る矢印を、互いに向き合う矢印に、変える。 評価する、ではなく、対話する、へ。

たった一文字を変えるだけで、同じ四段階が、人を閉じさせる型から、人をひらく型に、変わります。 その一文字が何なのか、変えると何が起きるのか、現場で何を見てきたのか。

それは、一冊の本に、まとめました。

こういうことを考えている人間が、どんな顔で、何を書いているのか。 もし、少しでも気になったら、覗いてみてください。


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