「うちは、良い人が採れない」。そう話す経営者の方に、何人もお会いしてきました。
その悩みの前に、知っておいてほしいことがあります。入ってくる人は、面接の前に、もう分かれています。
求人倍率が、20倍違う
リクルートワークス研究所の「第42回 ワークス大卒求人倍率調査」(2026年卒)による、企業の従業員規模別の大卒求人倍率を見てください。
| 企業規模 | 求人倍率 |
|---|---|
| 5,000人以上(大企業) | 0.42倍 |
| 1,000〜4,999人 | 1.05倍 |
| 300〜999人 | 1.43倍 |
| 300人未満(中小企業) | 8.98倍 |
5,000人以上の大企業は、0.42倍。約2〜3人の学生に対して、1社の求人です。企業から見れば、応募してきた人の中から、じっくり選べる。
300人未満の中小企業は、8.98倍。1人の学生に対して、約9社が取り合っている。企業から見れば、選ぶ余地が、ほぼない。格差は、20倍以上です。
学生は、まず人気企業を狙います
「マイナビ・日経 2026年卒大学生就職企業人気ランキング」を見ると、上位はソニーグループ(4年連続1位)、味の素、サントリー、トヨタ、任天堂、オリエンタルランド…大手ばかりです。トップ100に、小規模な中小企業は、ほぼゼロ。
学生は、まずトップを狙います。落ちた人が、次の選択肢に流れる。さらに落ちた人が、もっと下に流れる。そうやって、入ってくる人が決まる頃には、もう企業規模ごとに、入ってくる人が、構造的に分かれています。
これは、誰かが悪い話ではありません
ここで、気をつけたいことがあります。「だから大企業はずるい」「だから中小は損だ」という話ではありません。
ただ、出発点が違う、ということです。大企業に来る人と、中小企業に来る人。同じ研修を受けても、出発点が違えば、出てくる結果も変わります。
「うちの研修は効果が低い」のではなく、「うちに来てくれる人と、大企業に行く人で、出発点が違う」だけ、なのかもしれない。これは、外からは見えないことです。だから、断定はできません。でも、ひょっとしたら、こうかもしれません。
ここまでだと、中小企業は「もう負け」みたいに聞こえてしまいます。そうじゃない話を、書きたいんです。
発信できている小さな会社は、違います
中小企業が、一律に「弱い側」かというと、そうではありません。
マーケティングをしっかりしている会社は、規模が小さくても、サイトとSNSが機能しています。社長の趣味と仕事を組み合わせて、独自の魅力で発信している会社。「うちは、こういう志を持っている。こういう仲間と一緒に働きたい」と、自分の言葉で語っている会社。
そういう会社には、「応募者」ではなく、「志を共にする仲間」が集まります。求人倍率8.98倍の中で、こういう会社は、競争の外側にいます。お金で人を奪い合うのではなく、志で仲間を集める。集まる人が、最初から違うんです。
ただし、「あるだけ」では意味がない
誤解しないでほしいんですが、ホームページを持っているだけ、SNSをやっているだけでは、こうはなりません。
世の中の中小企業のホームページを見てください。会社概要、事業内容、代表挨拶、お問い合わせ。テンプレートのような構成で、業者が作ったまま放置されている。SNSも、たまに「年末年始のお知らせ」「新年あけましておめでとうございます」を投稿するだけ。これでは、誰の心にも届きません。
「ある」のと「機能している」のは、違うんです。読み手が「この会社は、自分と志を共にできる」と感じる発信。これがあるから、人が選ぶ。求人倍率の数字を超えて、仲間が集まる仕組みができます。
数字は変えられない。でも、外側には出られる
求人倍率の0.42倍と8.98倍。この数字は、一社の努力では変えられません。
でも、その競争の、外側に出る道はあります。お金で人を奪い合うのか。志で仲間を集めるのか。
「良い人が採れない」と嘆く前に、自分の会社は、何を、どんな言葉で発信しているか。一度、見直してみてください。選ぶのは、あなたです。
出典
- リクルートワークス研究所「第42回 ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)」(2025年4月発表)
- マイナビ・日本経済新聞社「マイナビ・日経 2026年卒大学生就職企業人気ランキング」