研修の資料を作っていて、ちょうどいい図をネットで見つけた。本の中の一ページが、説明にぴったりだった。そのまま貼って、下に出典を書く。

しかし社内の研修でも、出典を書いても、それだけで使ってよいことにはなりません。図にも写真にも文章にも、作った人の権利があるからです。

社内だけで使っても、個人で使うためのコピーには当たらない

本や記事を、個人や家庭の中で使うためにコピーすることは、著作権法で認められています。「私的使用のための複製」と呼ばれる決まりです。

ただし文化庁の説明では、これに当たるのは家庭の中など、限られた範囲で使うための複製です。そして「仕事での利用は×」とされています。研修資料や会議の資料は、仕事で使うもの。社内だけで配るとしても、この決まりには当たりません。

学校の授業の例外は、会社の研修には当たらない

学校の授業では、先生が授業に必要な範囲で、本の一部をコピーして配ることが認められています。著作権法の35条です。

研修も教えるための場なので、同じように使えると思いがちでしょう。しかし35条の対象は学校その他の教育機関で、営利を目的として設置されているものは除かれています。文化庁の資料でも、「企業等の研修施設」は対象外の例として挙げられています。

許可を取らずに使うなら、引用の決まりを満たす

では、人の作ったものはいっさい使えないのか。決まりを満たせば、許可を取らずに使う方法があります。それが「引用」です。著作権法の32条には、こう書かれています。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法 第32条第1項(e-Gov法令検索)

文化庁は、この条文を次のように説明しています。「例)」のあとは、研修資料に当てはめたときの例です。

  • 公表された著作物であること:例)まだ世に出ていない資料は使わない
  • 引用の必然性があること:例)その図を見せないと、説明が伝わりにくい
  • 引用する部分が明確に区別されていること:例)枠で囲む、「」でくくる
  • 自分の著作物と引用する部分に、妥当な主従関係があること:例)自分の説明が主になっている
  • 引用する分量が必要最小限であること:例)図を一枚、文を数行
  • 出所の明示:例)誰の、何から取ったかを書く

出典を書くのは、この中の一つにすぎません。ほかを満たしていなければ、出典を書いても引用にはならないのです。

研修資料でいえば、スライドの大半が人の図で自分の説明が一行だけ、という形は主従が逆になり、引用とは言いにくくなります。本のページを丸ごとコピーして配るのも同じです。こうした使い方をしたいときは、作った人や出版社に許可を取ってください。

引くときは、元の資料から

誰かが引用していたものをそのまま引くと、途中で言葉が変わっていたり、数字が古くなっていたりすることがあります。引くときは、元の本や国の資料、発表した会社のページから引きましょう。

写真やイラストは、使う前に利用規約を読む

無料で使える写真やイラストのサイトも、決まりはサイトごとに違います。たとえば、次のような条件がついていることがあります。

  • 個人の利用はよいが、仕事での利用は不可
  • 作った人の名前を書くことが条件
  • 加工は不可

研修資料は仕事で使うものです。使う前に、そのサイトの利用規約で仕事での利用が認められているかを読みます。

社内の人が写った写真を使うときは、写っている本人に研修資料に載せてよいかを聞いてから使ってください。

このサイトのシートを研修で使うとき

このサイトで配っているシートにも、ダウンロードの下に「ご利用にあたって」として、使ってよい範囲を書いています。

  • 会社や団体の中で、印刷・配布・書き込みをして使う
  • 自社に合わせて、欄や文言を書き換えて使う

社内の研修で配るのは、この範囲に入ります。一方、シートの販売や、ほかのサイト・サービスへの転載・再配布はお断りしています。書き換えたものも同じです。

シートは、フレームワークシートの一覧と、無料テンプレートのページからお選びください。

いちばん安心なのは、自分で作ること

説明に使う図は、できるだけ自分で作ります。数字や事実そのものは、誰かの表現にはあたらないとされています。人のグラフを貼るのではなく、元の数字から自分で図を作り、数字の出どころを書きましょう。

自分で作った図は、自分の言葉で説明しやすくなります。受講する人にとっても、その研修のために作られた図のほうが、話とつながって頭に入るはずです。

まとめ

社内で使う研修資料でも、仕事での利用は個人で使うためのコピーには当たりません。学校の授業の例外も、会社の研修には当たりません。人の作ったものを使うときは、引用の決まりを満たすか、作った人の許可を取ります。

研修資料は、受講する人が仕事で資料を作るときの見本にもなります。

出典

  • 文化庁著作権課「著作権制度の概要について」(令和6年度 著作権事務担当者講習会)
  • 文化庁著作権課「教育のDXを加速する著作権制度〜授業目的公衆送信補償金制度について〜」(2025年5月)
  • 著作権法(e-Gov法令検索)
  • 文化庁「著作権」

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