新人が入って3か月。教えたことは一通り伝えたはずなのに、同じところで止まっている。教える側は、だんだん焦ってきます。
「この人は、向いていないのかもしれない」。そう思い始めるのも、このころです。
教えた分だけ、まっすぐ伸びると思っている
教える側は、教えた分だけ少しずつ伸びていく姿を思い浮かべています。1か月でこれくらい、3か月でこれくらい、という具合です。
しかし、人ができるようになる道のりは、たいていそうなりません。しばらくは、ほとんど変わらないように見える時期が続きます。そしてある所を境に、急に伸び始めるのです。

周りから見ると、ある日いきなりできるようになったように見えるでしょう。けれども本人の中では、伸びない時期にも少しずつ積み上がっています。手順を覚え、失敗し、なぜ失敗したかが分かる。その積み重ねが一定の所まで来たとき、外から見える形になって出てきます。
なぜ、伸びない時期があるのか
仕事は、一つひとつの手順の足し算ではないからです。手順を覚えただけでは、まだ動けません。手順と手順のつながりや、場面ごとの判断が分かって、はじめて一人で回せるようになります。
たとえばレジの打ち方を覚えても、お客様が並んだときにどの順で何をするかが分からなければ、レジは回りません。一つずつはできているのに、全体としてはできていない。この時期が、外からは「伸びていない」ように見えるのです。
「黙って耐えろ」の理由には使わない
ここで一つ、気をつけてほしいことがあります。この伸び方は「今は伸びない時期だから、黙って耐えろ」と、本人に無理を続けさせる理由に使われることがあります。
伸びない時期があることと、本人が困っていることは、別の話です。教え方が合っていない。任せた仕事が重すぎる。聞ける相手がいない。こうした原因で止まっているなら、待っていても伸びません。
だから伸びない時期に教える側がやるのは、待つことだけではありません。本人が何に止まっているかを聞き、止まっている所を一緒に見ることです。
伸びない時期に、教える側がやること
- 先に伝えておく:入ってすぐのうちに、「最初はしばらく伸びない時期がある」と伝える。知っているだけで、本人の焦りは小さくなる
- 昨日の本人と比べる:同期や前の新人と比べず、先週できなかったことが今週できたかを見る
- 小さくできたことを、言葉にして返す:本人には、自分の伸びが見えにくい。見えている側が言葉にする
- 止まっている所を聞く:何が分からないかを本人に話してもらい、教え方や任せる量を変える
教える時間は、先に払うもの
人を育てる時間は、成果が出る前に払うものです。教えた日の夕方に、成果が返ってくることはありません。返ってくるのは、数か月先です。
そのため教える側から見ると、払った時間に何も返ってこない期間が続きます。この期間に教えるのをやめると、それまでに払った時間も、伸び始める直前で止まってしまいます。
伸びない時期を先に見ておくための型
- 10 新人の一年の道のり:新人が、いつ、どこで不安になるかを先に知っておきたいとき
- 19 予定と実際の振り返り:振り返りが、反省の言葉だけで終わってしまうとき
- 8-2 ゾーン図:任せた仕事が、簡単すぎるのか難しすぎるのか分からないとき
まとめ
人の成長は、まっすぐ伸びません。しばらく平らな時期があり、ある所から伸び始めます。伸びない時期に「向いていない」と決めず、止まっている所を聞き、小さくできたことを言葉にして返す。教える時間は、先に払うものです。
次に「伸びていない」と感じたときは、この曲線のどのあたりにいるのかを、本人と一緒に見てください。
